夢からのメッセージ 〜自分で自分の首を絞めていた、あの頃の私へ〜

コラム

かなり昔、離婚して起業して、環境が激変した直後ぐらいだったと思う。 私はある夜、とても恐ろしい夢を見た。

薄暗い部屋の中に、私は1人きりでいる。 ふと、不穏な人影に気づいた。 それは、長い髪が顔にかかって表情が見えない「女」だった。 その影は、少しずつ、少しずつ私の方に近寄ってくる。 私は恐怖で後退りし、ついに壁際に追い詰められた。

逃げ場を失った私に対して、女はすっと腕を伸ばし、私の首を力任せに絞めにかかった。 喉が潰れ、呼吸ができない。猛烈な恐怖のなか、私は全力で声を振り絞り、「助けて!」と叫んだ。

「…ーっ!!」

大声で叫ぶ自分の声で、ガバッと目を覚ました。 心臓がバクバクと壊れたように音を立て、全身に嫌な汗をかいている。 (夢だ……よかった、夢だった……) 私の叫び声に驚いた母が、慌てて部屋に駆けつけてくるほどの生々しさだった。

あまりにも恐ろしくリアルな体験に、当時は「心霊現象か何かだろうか」と怯えていた。 でも、違った。

あれは、心霊現象などではなく、「自分で何もかもを抱え込んでしまう」私の性質が、そのまま鏡のように現れた潜在意識からの強烈なメッセージだったのだ。

当時、私は離婚や起業という大きな人生の転機の中で、「これから何としてでも人に頼らず、自分で全部やっていかなければいけない」という凄まじいプレッシャーを背負っていた。まさに精神的に「壁際まで追い詰められていた」のだと思う。

夢心理学では、夢に現れる“顔の見えない女“とは、「自分が抑え込んでいる激しい感情」や、「自分自身の生霊(生き霊)」であると解釈するそうだ。

当時の私は、周囲に対して「平気な顔をして、完璧にしっかり前を向いて生きよう」と、無意識ながらも必死に理性を保って武装していた。 けれど、その仮面の裏側には、言葉にできなかった「怒り」「悲しみ」「裏切られた思い」「口惜しさ」、そして「将来への猛烈な不安」といった、ドロドロとした感情が渦巻いていた。

そして、“首を絞められる“という描写。 それは、私が「本当の気持ちを誰にも言えず、喉を締め付けられるようにして、自分の声を押し殺して生きていた」という状態そのものの象徴だった。 「もっと頑張らなきゃダメだ」「弱音を吐くな」「泣くなんて許さない」と、自分で自分を厳しく痛めつけ、自分の首を絞めていた――。まさに内なる虐待の構図だったのだ。

しかし、この恐ろしい夢の本当のハイライトは、私が最後に「必死で声を出して、実際に叫んで目を覚ました」ということにある。

限界を迎えていた心と体に、私の潜在意識は、最後の力で「叫び」を上げさせた。 「もうこれ以上、一人で抱え込むのは限界だよ! 助けて! 私に声を上げさせて!」という、魂の、必死の防衛本能だった。

あの叫びによって、私は内側に溜まりすぎて爆発寸前だった猛烈な圧力を、一気に外へと「排泄(デトックス)」し、心のピンを引き抜くことができたのだ。

ただ一つ、当時の私には疑問があった。 なぜ、離婚や起業のプレッシャーの「真っ最中」ではなく、すべてが少し落ち着いて、ホッとした頃にこの夢を見たのだろう?

調べてみると、それは人間の心と体の極めて自然なメカニズムだった。 緊張の真っ只中にいるときは、生きるためにアドレナリンが出ていて、心は麻痺している。それが、最大の危機を乗り越えて、安全な場所に辿り着き、フッと緊張が解けた瞬間に、溜まっていた潜在意識のデトックス(大掃除)が始まるのだそうだ。

それ以来、私は「夢」の仕組みに深く魅了されるようになった。 数十年前から夢日記をつけ、起きた瞬間に手から溢れる水のようにスルスルと消えていく夢を、必死にすくい上げる習慣を続けている。

記録を続けるうちに分かったのは、「夢」の世界には私たちの時計のような過去・現在・未来という直線的な時間は存在しない、ということ。

過去の処理しきれなかった感情を、安全な時差を置いて吐き出させてくれる「タイムカプセル」のような夢。 今現在の自分の状態を、肉体の不調や胃の痛みと連動して鏡のように見せてくれる「リアルタイムのナビ」のような夢。 そして、これから向かう未来の景色や、新しく始まる人生のステージを先取りで見せてくれる「予知」のような夢。

夢は、この三次元の狭い視点では認識できないことを、もっと高い次元の、大きな視点からちゃんと把握して、その時々に必要なメッセージとして私たちに教えてくれている。

あの最初の恐ろしい夢も、私を怖がらせるためではなく、当時の何も見えていなかった頑なな私に、高い視点から「もう叫んでいいんだよ」と感情を吐き出させ、浄化へ導いてくれるための、大いなる愛のメッセージだったのだ。

その後も、そして最近も、私はよく夢を見る。 五感で触れるような生々しい日常の夢から、時には、高い場所から風を呼び、空一面に雲を広げ、キラキラ輝く美しい雪を降らせるような、スケールの大きな夢まで(笑)。

夢は、あなたの奥深くにいる「本当のあなた(高い意識)」からの手紙。 その声をちゃんと受け止め、人生に活かせるようになれば、私たちはもっと身軽に、もっと自分を愛して、楽しく生きられるようになる。

今、あなたがもし、自分の声を押し殺して、自分で自分の首を絞めているように苦しいなら――。 どうかあなたの潜在意識が放つ、小さな「叫び」やサインを見逃さないであげてほしい。

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